ラブストーリーと友情の両方を楽しめ、涙する
- タイトル:リセアネ姫と亡国の侍女
- 作者:ナツ
- イラスト:山下ナナオ
- 出版:ジュリアンパブリッシング/フェアリーキス (2017/8/28)
あらすじ・主な登場人物
父親に疎まれて幽閉されていた皇女パトリシアは、父帝が討たれて国が滅びた日に、隣国の王太子クロードに助けられる。ふたりは強く惹かれ合うが、身分を捨てたパトリシアーティアと名を改めた彼女と王太子が結ばれることは許されるはずもなかった。
クロードの妹のリセアネは、政略結婚としてフェンドル国へ嫁ぐことになる。フェンドル国王は、ティアを処刑しようとした人物だった。だが、リセアネはクロードとティアの恋が実るように働きかけるため、彼女を侍女として連れていくことを決める。
感想
前作「ナタリア姫と忠実な騎士」に続くサリアーデ王国の3兄妹のお話。今回は、前作でヒロインの妹として登場したリセアネと、兄のクロードが出征先で出逢った亡国の皇女、ティアがWヒロインの形で描かれていく。
何もかもが恵まれており聡明な長所もたくさん持っているのに、際立つ容貌故に誤解されることが多く、内心では鬱屈したものを抱えているリセアネ。一方、父を諫め続けても報われずに、国を失うことになったティア。ティアは父親に喉を突かれた影響で、声も命すらも殆ど失いかけていた。
ひたむきに失われた国のことを想うティアに感化され、王族としての責任を果たすことを考え始めるリセアネ。一方、物怖じしない性格のリセアネに、自分を押し殺すことしかしらなかったティアも癒されていき、王妃となった彼女を支えたいと願う。
異なったバックボーンを持つので、それぞれの考え方や性格、行動は全く違う。だが、それ故に互いが互いのために起こした行動が道を切り開いていくことになる。ヒロインふたり分のラブストーリーも堪能しつつ、友情が築かれていく過程を見守れる。でも、ストーリーに無駄なところがなくしっかり整理されている。そして単純に涙が出る。なんというか「お得」な話である。
ちなみに、Wヒロインだけあって、当然カップルも2組登場するわけだが、私の推しはどちらかというとクロード×ティアである。はじめは庇護する関係性であっても、上下関係ではなくて互いの立場や生き方を尊重し、ひたむきに想い合う大人のカップルだと思う。