前世の未練と現世の溺愛の幸せな融合
本の情報
- タイトル:私の推しは当て馬です! 転生して義弟を可愛がったらめちゃくちゃ執着されました
- 作者:クレイン
- イラスト:白崎小夜
- 出版:メディアソフト/ガブリエラブックス (2020/7/30)
あらすじ・主な登場人物
義弟アロイスが実は自分と血の繋がりがない存在だったと知った日、ユリアナは同時に前世の記憶も思い出した。彼はユリアナが前世で読んでいたマンガの登場人物で、予期せぬ死を遂げる未来が待っている。推しの未来を変えなければ!と奮起するユリアナだが、実はもうすでに結構現在とマンガの世界は変わってしまっており…?
感想
物語の起点となるユリアナが前世の記憶を取り戻すのは16歳だが、3カ月違いの二人が義姉弟になるのは10歳の頃。マンガでは義家族との仲も冷え切っていたアロイスだが、今世では記憶も取り戻していない内からユリアナが義弟(元推し)を溺愛し、農業を趣味とし、病に倒れた前世の未練を無意識に晴らす形で伸び伸びと人生を謳歌していたことで、すでにだいぶ世界観が変わっている。しかも悲恋相手になるはずだったヒロインも、ちょっと「思ってたのと違った」状態
義姉を手に入れる為なら何でもやってしまうことから作中でヤンデレとも形容されるアロイスだが、推しに執着するあまりに農業改革に乗り出すユリアナもなかなかのものだと思う。おまけに、前世では実践に活かすことのできなかった卒論もしっかり活用。前世の心残りもしっかり現世で晴らしている。
ちなみにユリアナは、推し作品以外の日々の生活も克明に記憶しているタイプの、やや珍しい転生令嬢なのだが、その流れを受けたエピローグが素敵。時が流れれば失われるものもあるが、文字通り、品種改良した小麦の如く現世にしっかり根を張って生きていく転生令嬢である。