最後まで結末が見えないが、そこはかとないユーモアもあり一気に読んでしまう
- タイトル:やり直し令嬢と宿縁の王 ~自国の滅亡を回避できないので、人生諦めようと思います~
- 作者:マツガサキヒロ
- イラスト:堤
- 出版:ジュリアンパブリッシング/ロイヤルキス (2022/7/29)
あらすじ・主な登場人物
元公爵令嬢のオーレリアは、過去に三度の人生を生き、ふたりの夫と結婚した。だが、何とか祖国と自分を生かす道を見つけようと奮闘するも空しく、時を戻す魔法が繰り返され、四度目の人生に戻ってしまう。
結婚するという道を拒絶したオーレリアは国境近くの修道院に入り、治癒魔法を使って民の為に働いていた。だが、そこで再びかつての夫となったふたりと邂逅してしまう。
感想
最後までどちらに転がるかわからないお話だった。人は誰かに見出だされ、役割を負うことによって生き方が変わる。自分を強く持っているつもりでも、自分一人で、自分の生き方や、自身の人となりを決めることは難しい、ということを、全く違う4回のオーレリアの人生を辿りながら思う。
オーレリアは「二人目の夫」ランベルトを恐ろしい巨人のような人間だと思っていた。だが、彼は自分のことを透明人間だという。オーレリアも、ある意味ではずっと、透明人間だったのかもしれない。自分の生き方にどう色を付けようとしても、彼女以外の人間にはその色をまるで見て貰えず、そしてオーレリアは何度も人生を繰り返すことになった。
それぞれの登場人物が抱えている過去は重たいのだけれど、ふたりの"夫"達が彼女をめぐるやり取りの中にはそこはかとないコミカル加減もあり、一気に読む中で心の移りようがすんなり染みた。誰かが少しずつ何かを諦めながらも、光を見つける終わり方でよかったと思う。