変形版サトラレ王女※ややネタバレあり
あらすじ・主な登場人物
トローディの末王女に生まれたエルシーは花の女神の加護を受けた特別な能力を持っている。幼い頃に出会った隣国のウィルバートに14歳のときに嫁いだエルシーは17歳の誕生日を迎えたことを機に、ふたりの関係を進めたいと願い――
感想
少女漫画やTL小説のイラストは背景に花が散っているのがお約束だが、この作品の背景の花はすべて本物(作品世界における)である。感情がぶれると、そのときの感情に応じた色の花を生み出してしまうというエルシーは、ある意味で変形サトラレである。
陰謀や何かに巻き込まれる、などの展開はないので、全体的には安心してウィルバートとの"ラブラブレッスン"を楽しめるTL小説。ただ、細かい揺らぎの積み重ねが上手いなあと思う。
幼い頃に出会い、成人前に嫁いだエルシーが知らなかった婚姻の裏事情。無邪気で素直でありつつも、感情がすぐに花という形で具現化されてしまうが故の悲哀を静かに抱えているエルシーの陰。愛し合っている家族も必ずしも一面的ではない。それでも何があろうともヒロインをしっかり溺愛する夫がふたりの世界を守ってくれるとこがとてもよい。
本の情報
- 作者:麻生ミカリ
- イラスト:アオイ 冬子
- 出版:ハーパーコリンズ・ジャパン/ヴァニラ文庫 (2018/2/15)