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令嬢系中心にTLやラノベを読んでいるブログ

変形版サトラレ王女※ややネタバレあり

あらすじ・主な登場人物

トローディの末王女に生まれたエルシーは花の女神の加護を受けた特別な能力を持っている。幼い頃に出会った隣国のウィルバートに14歳のときに嫁いだエルシーは17歳の誕生日を迎えたことを機に、ふたりの関係を進めたいと願い――

感想

少女漫画やTL小説のイラストは背景に花が散っているのがお約束だが、この作品の背景の花はすべて本物(作品世界における)である。感情がぶれると、そのときの感情に応じた色の花を生み出してしまうというエルシーは、ある意味で変形サトラレである。

陰謀や何かに巻き込まれる、などの展開はないので、全体的には安心してウィルバートとの"ラブラブレッスン"を楽しめるTL小説。ただ、細かい揺らぎの積み重ねが上手いなあと思う。

幼い頃に出会い、成人前に嫁いだエルシーが知らなかった婚姻の裏事情。無邪気で素直でありつつも、感情がすぐに花という形で具現化されてしまうが故の悲哀を静かに抱えているエルシーの陰。愛し合っている家族も必ずしも一面的ではない。それでも何があろうともヒロインをしっかり溺愛する夫がふたりの世界を守ってくれるとこがとてもよい。

本の情報

  • 作者:麻生ミカリ
  • イラスト:アオイ 冬子
  • 出版:ハーパーコリンズ・ジャパン/ヴァニラ文庫 (2018/2/15)

 


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仲良し姉妹にホッとするお話

あらすじ・主な登場人物

美女と評判の姉ロゼリアと比べられ、きつい顔立ちとは裏腹の気弱な性格のリーゼロッテ。姉の身代わりで参加した仮面舞踏会で顔を合わせた国王ウォルドを慕っていた。だが、ウォルドはロゼリアと婚約する予定となっていた。

そんなある日、ロゼリアが婚約破棄をして権利をリーゼロッテに譲ると言い出す。

感想

この話は出番が少ないロゼリアの強烈なキャラが回している感もあり。身分の高い令嬢らしさを存分に発揮した魅力的なキャラである。リーゼロッテはどうしても世間に姉と比べられてしまうことにコンプレックスを持っているが、それも致し方なし感もあり。姉妹仲は至って良好なのがほっとするところ。

猫のミア様をもふもふしながら一途に国王を慕うリーゼロッテ。国王として他の令嬢も王妃選考対象にするなど、やや非情にも見える判断をしつつ、やっぱり押せ押せなウォルドは、やや気弱なリーゼロッテにちょうどよいバランスなのかもしれない。

本の情報

  • 作者:伽月るーこ
  • イラスト:天路ゆうつづ
  • 出版:竹書房/蜜猫文庫 (2018/8/22)

 


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強いて言うならスルースキルが前世チート級な推し活至上ヒロイン

あらすじ・主な登場人物

謎の青い鳥を見かけて、ここが乙女ゲームの世界であり、自分が悪役令嬢であることに気づいたアメリア。不遇な断罪を避けるために婚約予定の第二王子エリオットとの婚約を辞退しようと目論むが、結局"偽装婚約"を結ぶ羽目になる。だが、王宮に出入りするメリットを活かして前世の推し令嬢の監視に夢中になり―-

感想

この作品は、個人的にDB蓄積している異世界転生系分類でいうならば、「平和なバタフライエフェクト型」である(その対極が「魅了ざまあ型」であるがまた別のところで)。世界観の提示はあるがシナリオ強制力はなく、ヒロインがのびのびと推し活に励めるので、大変心が平和である。最初は自己陶酔型かと思った第二王子が割と早くにデレてくれるので、どこまでヒロインが天然スルーを引っ張るかが見どころである。

唯一残念なのが、小説には挿絵がないこと。描写から察するにかなり個性的な面々が揃っているので、その辺はコミカライズで脳内補完するのがよさそう。

本の情報

 


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ツボを刺激するヒーローに幸あれ

あらすじ・主な登場人物

弟を庇ったことがきっかけで皇族の不興を買い、サラの婚約者ハインは戦場で亡くなった。残されたサラは、彼の弟マクシムと名ばかりの婚約関係を結び、十年以上が経った。皇位争いに勝った新皇帝オルウェイが妃を迎えた折に、サラは侍女として都に呼ばれ、マクシムと再会する。彼は皇位簒奪の立役者であり、大量の粛清を行った側近として恐れられていた。

年月がいくら経ってもハインを失った痛みは消えないままで、距離を縮められないふたり。そのうえマクシムは護衛対象の王妃に惹かれているようだった。サラはマクシムが過去の柵から解放されて幸せを掴むことを願うが――

感想

ストーリー展開を把握する、という観点では、続刊の仮面の心を奪うのはを読まないと理解できない部分がある。

の上で、端的に羅列すると

  • マクシムというキャラクターが萌えの塊
  • 無表情/冷酷でない面が途中からどんどん出てきて堪らない
  • サラの母性で包んで一生よしよししてあげてほしい

あまりにマクシムが好きになりすぎて、続刊のヒーローに心を惹かれなかったため、ストーリー全容把握はどうでもよくなり、結果、続刊を読むまでに半年以上かかった。(とはいえ結局読んだし、読んでみればこちらのカップルもどうぞ末永くお幸せにではあった)

喪われた人は決して還らないし、痛みが消えるわけではない。でも、弟と婚約者の幸せを願って最後まで生きた兄の選択を、罰のように抱えていくのではあまりにも切ない。どうかこの先もこのふたりが、幸せを幸せとして拾って生きていける人生を送れますように、と願う。

本の情報

  • 作者:水上涼子
  • イラスト:天路ゆうつづ
  • 出版:ジュリアンパブリッシング/ロイヤルキス (2021/7/30)

 


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複雑に縒り合わさった糸のような感情がやがて同じ方向を向き始める物語

あらすじ・主な登場人物

自国の卑劣な策略で虜囚とされた隣国の騎士団長テオドール。城で下女として働いていたオデットは特別手当のために、彼の世話を買って出る。毎日拷問に掛けられては独房に戻ってくるテオドールは、今にも命を失う寸前だったが、オデットはひたすら彼を世話し続けた。

拷問の日々は、彼を助けにきた隣国の奇襲によって終わりを告げる。そのとき彼の傍にいたオデットは、気づけば彼と一緒に隣国に連れ去られていた。テオドールはオデットに愛を告げ、求婚してくるが、恩を感じているだけだと彼女はなかなか受け入れられない。

感想

人が人を想う気持ちは、ひとつではない。というのが真っ先に思った感想。複雑に縒り合わさった糸のような感情が重厚で、満足感があった。

お互いに孤独を抱えながら生きてきた身。テオドールがオデットに向ける情は真っすぐでありながら、ある種の狂気に反転しかねない危うさがある。オデットがテオドールに向けるものはもっとジグザグと複雑だった。所詮自分は賃金目当てに人質の世話を買って出ただけだし、という負い目もある。だが、それを負い目と感じていることは、つまりオデットにもすでにテオドールに対しての"それだけではない”気持ちが芽生えている証でもある。実際、出逢いの状況を考えれば、ストックホルム症候群として別の展開を辿ることも有り得ることなのかもしれない。

だが、徐々に互いを理解し、暮らしを重ね、夫婦としての信頼を重ねていく内にゆっくりと縁が結ばれていく。閉じた世界で完結してしまいそうな危うさもあったが、社会的な立場を得て、夫婦として認知されることもこのふたりには大事だったのかもしれない。家族を得、穏やかな生活を築いていく過程がしっかり描かれている作品。

本の情報

  • 作者:碧貴子
  • イラスト:yuiNa
  • 出版:夢中文庫/夢中文庫プランセ (2022/9/9)

 


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せっせと餌付けする令息と素直に餌付けされる令嬢の幸せな執着劇※ややネタバレ感想

あらすじ・主な登場人物

男爵令嬢のジーナは、三度の飯より甘いもの好きな"平均よりなややぽっちゃり令嬢"。家族仲もよく幸せな日々を送っていた。ところが、王立学園に入学して早々に、2学年上の侯爵家令息・アルトゥールに一目惚れされてしまう。

その日からアルトゥールの怒涛の付き纏いに合うジーナだが、毎日甘いものを差し出し、幸せそうにジーナを見守る彼に絆され、交際を開始する。ところがある日、学校行事で歌劇を見に行ったジーナは観劇中に気絶してしまい――

感想※ややネタバレ

ややネタバレだが、書評のあらすじで転生ストーリーって書いてあるからいいか……転生である。
所謂異世界転生ではなく、ジーナの前世は同じ国の数百年前に実在したとされている人物だった。アルトゥールはジーナと出会う前からすでに前世の記憶を持っており、すぐに気づくが、ジーナは気づいていない。

人格も見た目も何もかもが違う生まれ変わりで、相手に惹かれる、というシチュエーションには、ある種の説得力が欲しいのだが、アルトゥールがジーナに惚れた最初の理由は「美味しいものを食べるときの幸せそうな顔」。シンプルに欲求に忠実で、強い。

最初はアルトゥールの執着ぶりに怖さも感じるジーナだが、基本的にジーナは家族に愛されて素直に育ち、自己肯定感も程よい令嬢である。体型をほんの少し気にしていても全く卑屈にはならない。毎日アルトゥールが貢ぐお菓子もせっせと味わい、また幸せな笑顔を浮かべる。そして素直に絆されてくれる。それは貢ぎ甲斐もあるというものだろう。

並行して描かれる絶世の美女・エレオノーラとジーナは、表面的な一部分で見ると全くの対極にあるし、かなり重たい展開も待っている。だが、人生は長い。ふたりで生きて、美味しいものを食べられればきっと大丈夫。物語が進むにつれ、徐々にふたりの姿が重なってくる。読後感が爽やかで良かった。

本の情報

  • 作者:クレイン
  • イラスト:すずくらはる
  • 出版:メディアソフト/ガブリエラブックス (2020/2/28)

 


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大事なことを伝え合わないままでも、想いだけはずっと繋がっているふたりのお話

本の情報

  • 作者:マチバリ
  • イラスト:緒笠原くえん
  • 出版:夢中文庫/夢中文庫プランセ (2022/8/10)

あらすじ・主な登場人物

元伯爵令嬢のシーラは、冤罪をかけられて爵位を返上した父親と共に辺境領に身を寄せていた。そこへ視察にやってきたのは、元婚約者であり、3歳上の第二王子のアラン。ひょんなことからシーラはアランの「夜伽役」を務めることになってしまう。

感想

読んでいる最中の感想としては、シーラは「夜伽役」を命じられた際に、アランの"女遊び疑惑"を聞いて、よく幻滅しなかったなあと思った。

婚約者時代から、言葉を多く尽くすわけではなくとも、穏やかに気持ちがつながっていたふたり。だが、謀略に嵌められてシーラの父親が失脚することになった際、アランは何も手を打つことができず、気づいたら婚約破棄が成立してしまっていた。アランは伝える努力をしないままにシーラを失ってしまったことを悔やみ続けていた。
後悔が負い目になり、やっと再会することができても、肝心なことをアランは伝えられていない。そのおかげで相変わらずすれ違ったままに、関係だけが進んでしまう。ただ、一貫して互いへ向ける想いは揺らがないのは読者としては安心ポイントである。

 


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